カラスヤサトシの「
おのぼり物語」を読んで、非常に感動してしまった。よもや4コマ漫画でここまで感動させられてしまうとは。まんがくらぶ連載時から感動的な内容ではあったが、単行本としてまとまるとここまでの力を得るのか。
これは、カラスヤサトシ氏の最高傑作かもしれない。
カラスヤ作品の魅力とは、笑いの向こうに透けて見える闇だと思う。そしてその闇がすべてカラスヤ氏の体験談であることの凄味と臨場感。その凄味をなんでもないことのようにさらりと描いてしまうことも。
今作品は、今までと反対側からの視点で見た、もうひとつのカラスヤサトシだと思う。闇の向こうに見える面白さ。いや、もっと接近して、闇のなかから見た面白さなのかもしれない。これはカラスヤ氏の視点なのか。
今までのカラスヤ作品は、カラスヤ氏本人の奇行などを、読者の目をしっかりと意識して紙の上に再現しているような、プロの手によるエンターテイメントであった。今作はそこをあえて覆し、それでもやはりプロの仕事としてきっちりと仕上げている。いやこれがプロとして仕上げようとしたものなのかカラスヤ氏の才能によるものなのかは判断つかない。
なんとなく上京したカラスヤ氏の不安と孤独と闘争。今までの作品では匂わせるにとどまっていたそれらの要素を中心に、漫画「カラスヤサトシ」の再誕生だ。
その孤独や不安を、そのままに感じそのままに描くその姿勢に、「咳をしても一人」「墓の裏に廻る」などの自由律詩を残した尾崎放哉を思い出した。さらにそこに、カラスヤ氏独自の世界が加わり、ひとつの文学と呼べるものになっている。
といってもやはりカラスヤ作品なので、カラスヤ氏らしい独自の笑いはいくつもあり、軽い気持ちでも読めるだろう。しかし、この本に潜む力は普通は見逃せないと思う。
ぜひとも一度は読んでほしい。本当は「とにかく買え」と言いたい所だが、まずは読んでみるところからはじめるといいと思う。漫画で描かれた詩集であり、4コマの形に最適化された文学だ。
ちょっと誉めすぎたかもしれん。読んだ直後の興奮状態で書いたからなあ。