中野の鼻
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尿意の保険
人間である以上どうやっても避けられないものがいくつかある。その中でももっとも不可避なもののひとつが尿意だ。尿意を避けるのは無理だ。尿意を無視するのは可能だが、そうすると大きな代償を支払うことになる。
成人用紙おむつとか装着すれば無視し放題だけど、その場合はおむつ装着の時点で結構大きな代償を支払っている気もする。少なくとも必要に迫られて装着しているんじゃなく個人的な趣味での装着なら、それはもうすでに代償を支払ったあとの人生だと思う。いろんなものを失っている。
もうひとつ不可避なものとして、睡魔がある。こいつも手ごわい敵だ。名前に魔と付けられているだけのことがある。ほかの不可避な欲求にこんな恐ろしい漢字が使われているものはそうあるまい。飢餓魔とか言わないし。魔羅はちょっと違うし。
そしてこの不可避な欲求二つが組み合わさったときの恐ろしさといったら半端ではない。尿意が先に攻めてきたときはいいが、睡魔に敗北してから尿意だとこれはちょっと困る。
大体の場合は睡眠中でも尿意はいったんこっちを起こしてから勝負を挑んでくれる。この辺は紳士的だ。でもたまに睡魔がそんな尿意の騎士道を認めようとしない。
尿意「駄目だ!寝首をかくようなまねをして言い訳があるまい!」
睡魔「うるせえよ、せっかく寝てるんだからこのチャンスを見逃すんじゃねえよ」
尿意「おのれ外道…誇りを失ってまで勝つ意味があるのか!」
そうして尿意が睡魔に説得され誇りを失ったときに生まれる悲劇が、おねしょだ。
おねしょはそんな尿意と睡魔の協力技でもあるが、こいつらは夢という武器まで使って襲い掛かってくる。夢の中でトイレが登場し、そこで油断させるのだ。どこまで外道なんだ、それで良いのか尿意!誇りを取り戻せ!
本当にリアルな夢を見せておいて、尿意を感じたところで夢の中でトイレに向かわせる、そんな恐ろしい戦術を使ってくると、人間としては手のうちようがない。意外と夢内で泌尿器を使ってもリアル泌尿器の開放に至っていないことがあるけど、それにしたって恐ろしい事態だ。
用心には用心を重ね、現実世界から対策をしておく必要がある。ということでここ最近中野は、尿意を感じたときに一度このように念じている。
「もし夢だったらやばい。目を覚ませ中野!!起きろ!!」
今はまだこの習慣が実際に役に立ったことは無いが、いざというときの備えなんてものは実際に役に立たないほうがいいのだ。きっといつか中野が夢で尿意を感じたとき、この備えが生きてくるはずだ。
いつかその状況になったとき、きっと尿意の騎士道と誇りを取り戻してやることができるに違いない。