中野の鼻

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 電車の中で、隣に座った女性二人組みがオタクだった。極力回りにわからないように、オタクならピンとくる暗喩やスラングを駆使して、オタク用語を直接口にしないように会話を進めていた。

 外見的にはオタク的なものは感じない女性二人だった。別に盗み聞きをしていたわけでもないし、中野が音楽を聴いているその合間合間に聞こえてくる会話だけだが、同じ世界に生きるものならば誰でもがわかるような、そんな会話であった。
 会話もへんにテンションをあげることなくなんでもない世間話のように進めていて、おそらくは職場などで正体を隠しているのではないか。

 やれ、年末のお祭りがどうした、掛け算がどうした、執事がどうした、とか。…こうしてみるとあまりカモフラージュできてないような気もするが、うまく聞き取れた中から特徴的な単語を抜き取って書いているからそう思えるだけだろう。

 ふと見ると、その女性たちの向こう側に立っている男性が、その会話の意味を理解した目で立っている。手にした携帯を操作していない。たまに他の人にもばれそうな単語が出ると、心配するかのような目で他の乗客を確認したり、メガネの向こうの目の動きだけで。

 その男性と目があった。二人はほぼ同時に一瞬だけその女性たちを見て、本当に軽く微笑を浮かべ会釈した。

 それっきり目を合わせることはなかった。

 少し気味悪く、少し居心地が悪く、でもすこし快適だった、そんな一瞬。
[鼻文章] Posted by 中野 at 2008-12-09 21:37:00 - コメント(2) - トラックバック(0)

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