こうなったらガンガンと漫画の話を書くぜ。
ギャンブルを憎悪しているといっても過言ではない中野だが、「
リーマンギャンブラーマウス」だけはなんだかとても好きだ。サイコロをコロンと振っただけで人生すべてが終わったりするあのばかばかしさ。そして荒唐無稽な登場人物。そこに絡む人々の悲喜交々では済まないような栄枯盛衰。非常に面白い。
そんなマウスの続編らしき本を本屋で見つけた。それがこの「
リーマンギャンブラーマウス女体地獄編」だ。残念ながらタイトルからは非常にヘボまった印象しか感じない。しかしあのマウスだ。きっと女体地獄から見上げた人間世界の壮絶な姿が描かれているのだろう。
そう思った中野が甘かった。こいつはもう、悶絶するほど駄目だった。
ああ、中野の愛したマウスはもう死んだ。そう思えるほどだ。
話の内容は、あのマウスが今ではとある企業のクレーム処理係として、毎日毎日土下座の日々。そこに派遣社員の巨乳女子がやってくる。そして二人で企業に謝りに行き、そこでなぜか勝負することに。勝負の内容は、巨乳女子が全身を使ってジャンケンをしたり、巨乳女子にマウスがまたがって人間競馬をしたり…。
ああ、駄目だ。なぜこんなことになったんだ、マウス。きっと誰もがそう思ったに違いない。マウスお前はあのときの包茎手術から生まれ変わったんじゃないのか!
もう、読むだけで辛い作品だった。しかしこれは、まさにマウスの心境そのものではないのか。
カワーダイス、ティアードロップ、ワイドクワトロと過酷なギャンブルの世界でぎりぎり生きてきた灼熱の季節から数年、窓際のような仕事で鉄より硬くなることもない生活。
そんな、鉛に埋め込まれたような毎日の苦渋を、読者とマウスは共有しているのではないだろうか!
グレゴリーペック主演で映画にもなった小説「白鯨」で、白鯨モビィディックが見つからずに船乗りたちが何週間も船に揺られ続けるというシーンがある。そのシーンでは、どうでもいい海の話や船乗りの話など、退屈な話が何ページも何ページも続き、読者は退屈を船乗りと共有する。
そこにモビィディックの影が見つかると同時に、船乗りたちは一斉に立ち上がり、それに伴い文体も勇壮でスピーディなものに変わる。
この残念な漫画は、正しくマウスの心境を描けているのではないだろうか。
今中野が「もうこの女体地獄編は読みたくない、普通のマウスをまた読みたい」と思っているのは、そのままマウスが「今はこんな毎日だが、またいつかあの頃の炎を心に…」と思っていることと同じなんじゃないだろうか。
いま、漫画のコマを通じて、作中人物と読者の心は一つになったのだ。いや、作者の手によって一つの流れになったのだ。
作中でマウスは、今の生活への不満を一切口にしない。しかし、マウスの心境はすべての読者に伝わったのだ。
素晴らしい。やはりリーマンギャンブラーマウスは健在だった。しかしもうこの本は見るだけで悲しくなるので、誰かにあげちゃいます。
中野さんは世間的な観点でいうところの「マイナー」な漫画がお好きなんですね。意外にも掘り出し物のような漫画がたくさんあって驚きました。
面白そうだから、今度読んでみようかな。